NPO法人環境カウンセラー

Enviromental Counselors Union
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宇都宮宣言

環境カウンセラー制度改革提言のための

ブロック意見交換会

宇都宮宣言



わたしたち環境カウンセラー全国連合会関東Bブロック協議会の環境カウンセラーは、変化する世界情勢や多様化する環境カウンセリングへのニーズに対応し、将来に亘って地域や事業者などあらゆる主体から期待される、有用な環境専門家、コーディネーター、仲介者などであり続けるために、以下の提言を行うとともにできることから行動に移していくことを宣言する。



3つの共有をめざそう

1.危機感の共有

意見交換会での率直な感想をいえば、近年の環境カウンセラー登録者の千人単位での減少や、都道府県での最大5倍に及ぶ登録者数の格差拡大などに代表される「現象」を、環境カウンセラー制度(以下、制度という)存立の「危機」とみるかどうかは参加者の意見の分かれるところであり、認識に温度差が存在する。「絶滅シナリオ」、「絶滅回避シナリオ」、「繁栄シナリオ」の提示、説明についても同様の反応であった。

しかしながら、今回のわたしたちの提言は、現状の表面的改革に止まるだけでは不十分である。現状の趨勢をみると、どうしても、「制度そのものが存在しなくなるかもしれない」という認識=危機感からスタートする必要がある。そのためには危機感の共有が必要であるが、これは誰かから強制されてそう思うという性質のものであってはならない。だからといって、制度が消滅した後になって制度を語っても意味はないであろう。そこで、「いま」わたしたちは制度の保全に関する「予防的な」処置として、危機感を共有する必要があると考えることにしてはどうか。

そのために、この宇都宮の地をスタートとして、全国での意見交換会において、このことが繰り返し議論・検討され、多くの環境カウンセラーに共感される形で共有される必要がある。


2.「いま」というタイミングの共有

周知のように2015年は9月の国連総会でSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、これが2016-2030年までの国際社会での環境保全の具体的な目標となる(17分野169目標)。

当然のこととして環境カウンセラーの活動はこの国際的な環境目標の達成に貢献するということに焦点を合わせていくことになるであろう。つまり、今後15年間の世界共通の、国際社会が協力して取り組むべき、そしてわたしたちがそれを「地域」で実践することになる環境保全活動の具体的目標項目が「いま」提示されようとしているのである。

このことに関連して、論理的な必然として、SD(持続可能な開発)のためのE(教育)であるESDは、昨年、名古屋で採択された「ESDの10年」の次の行動指針であるGAP(グローバル・アクション・プログラム)の具体的展開として、SDGs個々の達成を支援することが要求されるであろう。すると、今年度以降わが国の学習指導要領も逐次改訂されることになっているので、小中高校の学校教育の現場におけるESDはSDGsと新しい学習指導要領の整合性の上に実施されることになる。

気候変動に対応するための国の適応計画も今月閣議決定され今年度から地域の特性に応じた形で展開されていくことになる。二酸化炭素の排出抑制の基本となる2030年までのエネルギー別の電源構成や、温室効果ガスの排出量を2030年度に2013年度比26%削減するという国家目標も先頃政府から示された。さらに、新しい国土形成計画も今月閣議決定される。そして数年後にはこれらを取り込んだ第五次環境基本計画も策定されるであろう。

このように「いま」はじまったこれらの新しい動きは、全体として国際社会の場から個別の「地域」にまで「一貫して」流れ込む「環境の新しい潮流」であると認識することが環境カウンセラーにとって非常に重要である。そこには環境カウンセラーへの新しいニーズとそれにふさわしいニッチが存在しているからである。この好機・チャンスを逃すべきではない。

このように、新しい環境カウンセラーのビジョンを構築する上で最善のタイミングが「いま」である。新しいニッチがすべて埋まってしまう前に環境カウンセラーが相当のニッチを得ることが必要であり、そのときは「いま」しかない。このような環境カウンセラーの新しいビジョンを描くことは制度改革の基本である。理想の未来から現在を検討し、その在り方を見直すバックキャスティング活動がわたしたちに求められていると考える。

全国での意見交換会において、このことが繰り返し議論・検討され、多くの環境カウンセラーに共感される形で共有される必要がある。


3.改革の場の共有

制度は全国一律のものであるが、環境カウンセラーの活動は地域的であることが多い。このことが制度の改革を難しくしている。環境カウンセラー活動が地域優先であるということは仮にその活動が地域に完全に同化した場合、「全国一律の制度としての環境カウンセラー活動」という看板が必要なくなることも意味しているからである。これは今回の意見交換の場で出た「制度がなくなって困るのは誰か?」という問いかけにも通じるのであるが、地域におけるこのような環境カウンセラーの独自の「進化」は制度不要論あるいは「制度がなくなってもとりわけ困らない論」に変化しやすい原因でもある。事実、地域ではその方がいくつか所持する「肩書き」の、必要に応じた「使い分け」として「一時的に」環境カウンセラーを名乗る「専門家」も多い。このような状況が積極的な制度改革の必要性の論議を「後退」させる役割を果してきたとも考えられる。

また、環境カウンセラーが環境カウンセラー団体の一員として活動している割合は全体の半数以下であり、多くは個人や環境カウンセラー団体でない団体の一員として活動しているという事実がある。このことも議論の場や現状認識のための情報共有という点などから制度を正面からとらえて議論することを難しくしているのかもしれない。

結論から言うと、このような状況の中で、多くの環境カウンセラーが直接参加でき、制度の改革を正面から議論し、改革案を提示できる場・組織は環境カウンセラーの唯一の全国組織であるECUに限られる。

全国での意見交換会において、このことが繰り返し議論・検討され、多くの環境カウンセラーに共感される形で共有される必要がある。



付帯意見


1)「環境カウンセラー登録制度の在り方について(以下、報告書という)」について


「地域事務局」について

報告書の表5に示された課題を表6のように解決する組織として「地域事務局」が想定され、2019年に全国47都道府県で一斉に稼働することが計画されている。報告書には記載されていないが、表6の内容からその維持運営費を推定すると最低でも一カ所あたり1000万円は必要であると推察される。全国では4億7千万円が必要になることになる。これに対して、収入についても報告書には記載がない。

5年後以降、継続して全国一律に一カ所1000万円以上の収入を得るという計画は、わたしたちが環境カウンセラー活動に従事してきた経験上から現実的でないと判断する。


「全国事務局」について

報告書においては、環境カウンセラーの課題を将来設立する地域事務局においてすべて解決するという図式を描いているが、これまで20年近く活動してきた全国事務局の「課題」については記載がない。わたしたちはこの点を重視したい。

制度は全国一律のものであるから、全国の環境カウンセラー活動のセンターとなる全国事務局の活動や在り方に地域での環境カウンセラー活動が影響を受けることは当然である。しかし、問題はこのような建前論ではなく、逆に、全国事務局が環境カウンセラー活動への影響力を失った結果、地域での環境カウンセラー活動「のみ」を進化させ、結果として全国制度としての機能低下を招いたのではないかとの「疑問」があることである。

このことについては、報告書に記載がないので、全国事務局の課題、在り方については、わたしたち環境カウンセラーが自分たちの問題として独自に議論・検討していく必要がある。

また、地域事務局をコーディネートする組織として位置づけられている将来の「全国事務局」は年間3000万円程度の維持運営費を要すると想定されるが、この原資も収入も報告書では記載がないのであるから、内容の再検討が必要であると結論する。


2)「自治体のための地域人材活用マニュアル〜環境カウンセラー編〜(以下、マニュアルという)」について

このマニュアルは環境省から全国のすべての自治体に配布された画期的な環境カウンセラーの宣伝材料である。地域の環境カウンセラーは配布された部署に「営業」に出向く必要がある。早期に、ECU全体で活動することが効果的であると考える。


3)全国ネットワーク・システムを利活用した環境カウンセラーの新しい地域拠点づくりの試行

環境カウンセラー活動は「地域」での活動が主体であるが、そのことは環境カウンセラー活動が地域外部と完全に遮断され、全く単独で行われるものであることを意味するものではない。実際、地域の活動においては地域内部の自治体や民間団体などとの「協働・連携」が活発に行われている。ここで、問題になるのは、それでは地域内部で活動する環境カウンセラーは地域外部に存在する全国一律の制度をどのように活用し得るのか、あるいは地域外部に存在する全国一律の制度によって地域内部の活動がどのように活性化し得るのかという点であろう。この問題意識は制度改革の根本的な立脚点である。このことが曖昧であればあるほど、全国一律の制度である必要性、根拠が揺らぐことになる。

そこで、わたしたちは、全国一律の制度を活かした「理想」の環境カウンセラー活動地域拠点を試験的につくってみることを提案する。この「社会実験」の中で、「具体的に」これまでの制度の課題を解決する「道筋」を探り、かつ「理想」がどのように現実社会と折り合いをつけ得るのかを検証していきたい。

具体的には、年度内に会員団体を中心に地域拠点づくりの主体に手を上げてもらい、準備を始めて、来年度から試行を実施する。


4)ニーズを探るアプローチと成果の共有システムの利活用

『「いま」というタイミングの共有』で述べたように、環境カウンセラーが携わるべき環境の新しい潮流は目の前に存在している。わたしたちがそこからニーズを確実に読み取り、実績によって信頼を勝ち取り、かつ「環境カウンセラーにまかせれば大丈夫」という「ブランド」にまで育て上げるためには、環境カウンセラー個人や地域の一団体だけの力では到底無理である。

わたしたちに馴染みの深い例で言えば、環境教育等促進法第8条の「市町村の行動計画」の普及促進を支援する地域の専門家として環境カウンセラーはどのように行動することが望まれているであろうか。「環境教育等推進協議会」の構成者にどのようにしてなるのか。「行動計画の作成等の提案」をする場合、どのようにしてするのか。行動計画の策定後の活動はどうようなものが求められるのか。行動計画の内容と国際的なSDGs(持続可能な開発目標)の整合性をどのように提案していくのか。などなど、様々な課題に直面することが考えられるが、行動計画は全国すべての自治体に求められているものであるから、先進的な事例や活動、あるいは共通の悩みは全国に存在する。この成果や悩みを共有化するシステムは、必然的に地域を「超えて」存在するしかない。全国の環境カウンセラーが成果や悩みを共有出来るシステムの利活用が必要になる所以である。また、そのシステムを利活用するためには「タダ乗り」は許されないことになるだろう。ニーズの掘り起こしの段階から参加した者がその貢献度合いによって成果を相応に享受できる方策も考える必要がある。

また、ニーズは環境カウンセラーの特長である多様な活動形態に対応して探し出されなければならない。ボランティアからビジネス活動まで。個人から団体活動まで。民間から公共の領域まで。受託型から主催型の活動まで。子供への活動から高齢者への活動まで。いずれにしても、当面、ECU全体で「新しい潮流」から「ニーズさがし」を開始しなければならないと考える。


5)企業・組織内環境カウンセラーの利活用システムの創設

相当数の企業・組織内環境カウンセラーは、その身分のまま環境カウンセラーとしての活動が可能である。しかし、そのためには、その企業・団体の内部ルールを改革する必要がある。社会貢献の一環として、企業・組織内環境カウンセラーの利活用をはかるシステムの創設を呼びかけたい。このことは、環境カウンセラー登録者の増加にも通じるであろう(絶滅回避シナリオ)。


6)「環境カウンセラー補」の創設

高齢社会において高齢の環境カウンセラーが活躍すること自体は好ましいことである。しかし、できる限り若い世代に環境カウンセラー登録への門戸を大きく開放しておく必要があるのも事実である。わたしたちには後継者を育てる義務も存在する。制度が「持続可能」であるためには必要な数の環境カウンセラーを毎年獲得するためのシステムが必要である(絶滅回避シナリオ)。そこで、「環境カウンセラー補」の創設を提案する。

これは主に若年層をターゲットにしている。環境カウンセリングは「経験」の要素を重要視せざるを得ないのであるが、「今後の経験」を先取りすることも必要ではないか。「必要な」経験を「補」として積むことによって、「望ましい」環境カウンセラーになることができるということも合理性を持ち得るのではないかと考える。

したがって「環境カウンセラー補」は当初、知識、意欲を中心に選抜し、要求される一定の経験を経て正式の環境カウンセラーになるというシステムである。

この制度の創設に当たっては当然、環境カウンセラーにとっての「望ましい」経験とはなにか、という基本的な問いかけをクリアしなければならないが、これはこれまでの20年間に培われたわたしたちの知見と、「新しい潮流」の内容を勘案することで可能である。

以上


                            平成27年8月8日


                  特定非営利活動法人 環境カウンセラー全国連合会 

                    関東Bブロック協議会 会長 渡邊 重宣

                             理事長 佐々木 進市 


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宇都宮宣言2015.8.8 .pdf
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